九州大学法学部

2003年度 公法学科目「統治機構論」

(憲法総論・統治機構論)

前期期末試験(出題:南野 森)

 

統治機構論 2003年度前期末試験

九州大学法学部

2003年7月29日実施

100点を満点とする

書き込みのない六法と筆記用具のほかは、一切の持ち込みを認めない。

解答はできるだけペンを使用し、読みやすいように記述されたい。

 

担当教官  南野 森

 

一 次のA、Bいずれかの問を選択し、解答しなさい。なお、解答用紙には、いずれの問を選択したのか明記すること。( 50点満点)

  A)次の文章は、 1945年10月末の朝日新聞に掲載されたある論説の一部である。これに関連して自由に論述しなさい。

「・・・民主主義の政治の実現は現在の憲法の下においても十分可能であり、憲法の改正は決して現在の非常事態の下において即時に実行せねばならぬ程の急迫した問題ではないと確信する・・・」

 

 

  B)次の問答は、 1946年8月26日、貴族院本会議においてM議員とK大臣との間に交わされたものである。この問答が象徴することがらについて解説しなさい。

M議員 :「(従来のわが国の)国体、即ち万世一系の天皇が君臨し、統治権を総攬し給ふとする原理は、国民主権主義を核心とする新憲法に依って、果してどう言う影響を受けるでありませうか、(・・・)日本の最終の統治形態が、自由に表明せられた人民の意思に依って決定されるとする原理を承認し、国民主権を採用することは、理論的に見てその意味の国体に根本的な変革を与へることと言はなくてはならぬと思ひます。」              

K大臣 :「(・・・)私共の認識は主権が国民に在ると言ふことは、過去に於ては潜在的にさうであった。将来に於ては現在的に、顕在的に、顕はれた姿に於てさうであると言ふだけでありまして、本質的に変化はないもののやうに思って居ります。」

 

     

 

二 次のA、Bいずれかの問を選択し、解答しなさい。なお、解答用紙には、いずれの問を選択したのか明記すること。( 50点満点)

   A)次の見解について論評しなさい。

「憲法が、衆議院の解散という制度をみとめていることは明らかである。しかも、その解散は天皇の権能とされ、内閣の助言と承認によってなされることが要求される。それなのに、その解散決定権が内閣にないとするためには、だれがその決定権を有するか、を憲法は当然に明示すべきはずである。」

 

 

  B)次の文章は、ある著名な国会議員が、 1999年9月、ある雑誌に発表した論説の一部である。これを論評しなさい。

「 日本国憲法第一章第一条は、この一文である。

 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 いわゆる、戦後左翼の主張のように、単純に「平和憲法」と思っている人達は、前文の理念的なメッセージに引きずられて勘違いしている。日本国憲法は立憲君主制の理念に基づく憲法である。天皇が一番最初に規定されていることからも、それは明らかではないか。

 元東大教授の宮澤俊義氏などが「国家元首は内閣総理大臣である」と主張しているのも間違いである。宮澤説は大日本帝国憲法との比較において日本国憲法は共和制であると位置づけているのであるが、例えば第六条に書かれているように、主権者たる国民を代表し、若しくは国民の名に於いて内閣総理大臣及び最高裁判所長官を任命するのは天皇である。又、外国との関係でも天皇は元首として行動し、外国からもそのようにあつかわれている。このことからも国家元首が天皇であることは疑うべくもない。天皇が国家元首であることをきちんと条文に記すべきであると主張する人もいるが、今の文章のままでも天皇は国家元首と位置づけられている。 」

(以 上)

 

 

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