2005.4.4.(月)
午後6時から、パリの行政控訴院(Cour administrative d'appel de Paris)で南野の講演会。比較法協会の主催。会場が行政裁判所なのでまったく専門外の行政法について話すことになっていた。テーマは2004年6月に改正された日本の行政訴訟法について。左上の写真はその招待状。場所柄、これがないと入れないとのこと。南野も入り口で警備員に提示を求められた。。。
準備をする時間がそれ以前にはほとんどなかったため、この週末はアパートにこもって格闘する。今回の滞在で初めて「出前」をとる羽目に。そもそもフランス行政法の勉強などナンテール留学以来まったくと言ってよいほどしていないため、取消訴訟ってフランス語でなんて言うんだったっけ、などというレベルから記憶と辞書とインターネットを頼りに原稿を書き上げなければならない。引き受けるんじゃなかったと真剣に後悔する。昨夜はダヴィッドに中止できないかと電話をしたくらいだ。もちろん無理と断られたけれど。
日本の行訴法改正の経過については、角松先生からインターネット上の有益な資料をご教示いただいのが大助かりだった。とくに、司法制度改革推進本部のHPにある、行政訴訟検討会の資料のうち、立教大学の橋本教授の書かれた「行政訴訟に関する外国事情調査結果(フランス)」が、日仏の比較をするうえで大いに役にたった。角松先生、橋本先生、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
日本の行訴法の改正というテーマも特殊だし、講演者の南野というのも全くの無名。多くの聴衆が集まるわけがないとは思っていたけれど、それにもかかわらずやってくる人はそれなりに積極的な意思があって来るわけで、講演後の質問なども活発で、たいへんだった。
講演会最中の写真はヒレルが撮影してくれたもの。比較法協会の現会長である、元コンセイユ・デタ評定官のジャン=ルイ・ドヴォスト氏が司会を務めてくれたのは恐縮至極。右端にいるのは比較法協会の事務局長をも務めるダヴィッド。聴衆の中に武田君夫妻を見つけたときはうれしかった。興津君は来ると言っていたけれど、日本へ一時帰国中だったのかな。ま、日本の行政法の専門家に聞かれなくてよかったかも知れない(笑)。それにしてもヒレルは南野のデジカメが使いこなせていないようで、写真はどれもピンボケばかり。武田君の細君の写真に期待しよう。。。
講演会が終わったあと、控訴院の裁判官が南野の周りに集まっていた人々を即席「見学ツアー」に誘ってくれる。実は本日の会場であったパリ行政控訴院、Hotel de Beauvais という17世紀の邸宅を改装して使っている。一般公開はされておらず、滅多に入れるところではないので一同(日本人もフランス人も)、よろこんで案内してもらうことにする。驚いたのは地下。もともとは11世紀に修道院だったそうだ。そんなに古い建物がパリに残っているとは。。。
その後近くで夕食。武田夫妻は所用があり帰宅。ピカルディ地方からわざわざ南野の講演会のためにパリまでやってきてくれた美人検察官も帰宅。ダヴィッド、ヒレル、武田君夫妻の友人のフランス人弁護士と男ばかり4人でピザ。
2005.4.5.(火)
リール大学博士課程セミナー。ここしばらくゆっくり休養していないため、かなりくたくたではあるけれど、相変わらず刺激の多い楽しいクラスだ。都合のつく人は一緒に夕食をということになり、リュックと南野のほか、5名の院生が参加してリール駅前で夕食。土地柄なのか、ベルギー料理。午後10時発のパリ行きの終電に乗り、リュックと北駅まで戻る。帰宅したのち、九大法学部のホームページの更新やたまっていたメールの返信など。
2005.4.8.(金)
朝から雨。昨日街を歩いていて突然大雨になったため急遽買った安物の折り畳み傘を持ち、タクシーでコンセイユ・デタ(国務院)へ。評定官のクロザード氏から面会を求められていたため。最近国務院の総括報告官に任命された彼女、来年度のコンセイユ・デタ年次報告書の準備を始めているらしく、日本について少し話を聞きたいとのことで、インタヴューの申し入れが数日前にあった。南野、国務院の建物には入ったことがないため、快諾していた(笑)。
評定官からの申し入れの前に、いわば様子伺いのメールを南野に送ってきたのは、彼女のもとで研修中という大学生だった。とにかくこの研修(スタージュ)というシステム、すばらしい。日本でももっと広がらないものか。数週間から数ヶ月間、学生は完全またはほぼ無給で企業や官庁、法律事務所や裁判所などで「働く」。学生は社会経験、実務経験を積み、人脈をつくり、将来に活かす。受け入れ側では、お茶くみから高度な仕事まで、研修生の意欲・能力等々に応じ、こきつかう。スタージュを義務として課しているカリキュラムも多いが、義務の有無にかかわらず、スタージュに行くのはこちらでは一般的で、将来就職する際に、どこでどれだけどういうスタージュをしたかという記載が履歴書のなかでも重視されるとのこと。そういえば南野、東京に住んでいたころ、フランス大使館や在日のフランス企業にスタージュで来ているフランス人学生に何人も出会った。そもそもエティエンヌも、これはフランス企業ではないけれど、NTTに半年の研修に来ていたのだった。
それにしても、国務院で、しかも総括報告官のもとで研修できるというのはきわめてラッキーな学生だ。本人も相当運が良いと満足している様子だった。法学部で学んだことと、実務の経験とを活かして、将来どういう方向へ進むかはゆっくりこれから決めるとのこと。いやはや、すばらしい。東大生も、九大生も、いざ研修に出でよ!
さて、雨の中の国務院。日光が足りなくて、きれいな写真が撮れないのが残念。おまけに正面左側は大工事中。職員用の食堂を建築中とのこと。クロザード氏と研修嬢との3人での面談は、国務院最上階の内装はモダンな会議室で始まった。窓からは、パレ・ロワイヤルの中庭が一望できる。遠くには、曇っているものの、モンマルトルのサクレ・クール寺院が見える。すばらしい眺めだ。もともとここは17世紀にリシュリューの住まいとして建設されたもので、その後ルイ14世も幼少時をその母アンヌとともに過ごしている。さらにその後増築され大きくなっており、南側では西翼に憲法院が、東翼に文化省が入っているが、国務院が一番大きな面積を占めている。
日本の立法過程や、法・政治に対する市民意識などについての質疑応答が終わったあと、逆に南野から国務院についていろいろと質問をさせてもらった。そのあと、研修嬢に国務院内をいろいろと案内してもらう。南野のソニー製のデジカメ、唯一の難点はフラッシュが弱いこと。隅々まで見学させてもらい、写真もたくさん撮ったのだけれど、どれも暗すぎて今ひとつ。残念!
夕食は、再びパリにやってきたエレーヌとその友人夫妻の4人でアメリカ料理(断じて南野のチョイスではない)。ちなみに禁煙パッチが功を奏し、今日は南野、一本しかタバコを吸っていない。食後に立ち寄ったオペラ座横の高級カフェ「カフェ・ド・ラ・ペ」で、金持ちそうなご婦人二人組にもらいタバコをしただけ。買ったらおしまいだと言い聞かせている。。。
2005.4.12.(火)
ついにリール大学最終講義。時が経つのはいかにも早い。もはや来週には、リールではなく福岡で講義をしていることになってしまった。
今日のセミナーは午前に変更し、セミナー後に皆で昼食を日本料理屋で、ということにしていた。そこで朝8時発のTGVに乗る。びっくりするほどのがらすき。リールの地下鉄もがらがら。そして大学構内も人影まばら。今週から二週間、リール地方は春のバカンスに入ったのだ。ちなみにパリ地方の春休みは来週から。もちろん、博士課程にはバカンスなどない。
ラ・デルニエール・クラスということで写真をたくさん撮ってもらったのだけれど、ほとんどがピンボケ。南野のデジカメ、フランス人には難しすぎるのだろうか。。。
3時間などあっという間に過ぎてしまう。院生の車2台に分乗し、リールの旧市街にある日本料理「縄文」へ。南野は天婦羅定食にする。2時間以上、和気藹々と盛り上がる。
その後、リュックが旧市街を案内してくれる。なかなか感じのよい街だ。夜、TGVでパリへ戻る。
2005.4.19.(火)
ちょうど二ヶ月のフランス滞在を終え、南野、本日夜、無事に日本へ帰国しました。この間のご愛読(?)、まことにありがとうございました。
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2005年4月4日〜19日 |
パリ行政控訴院で講演、コンセイユ・デタ評定官と面談、リール大学最終講義、日本へ帰国 |
アテネへ出発、国際憲法学会、日本へ帰国 |
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